レース途中、体調を崩してしまった彼
私の眼の前で棄権した
レース後半に私の顔を見つけるなり
「もうアカン、ダメやわ、やめるかも」
そう口にして休憩スペースへ
私を探して
「ちょっと寝るわ」
そう言ったあと
どんどん体調が悪くなり棄権宣言となる
楽しみにしていたロングのレース
完走したかったよね
けど、あれじゃドクターストップだよ
私の眼の前で彼のレースは終わった
私はその後もボランティアを続け
家に帰りようやく床に就いたのは
翌日の明け方だった
帰宅したその夜、その次の日と
五月雨式に彼からメッセージが届く
悔しかった気持ち
頑張りたかった気持ち
やり切らなかった気持ち
寝る前に色々と思うんだろうね…
わし、弱いよな
わし、まだまだいけたやろな
わし、頑張れなかったよな
返す言葉が見つからない
電話じゃないから
相槌もうてない
がんばってたよ
がんばってはいたよ
私の目にはそう映っていたよ
その言葉を書き込んでからは
何も書かず
ただただ
彼が気持ちを吐き出し
私が彼のメッセージのこちら側で
ただただ頷く
そんな時間だった
私の眼の前で棄権したわけだし
状況を詳しく把握ができているから
さらに話しやすいのもあるのかな
ここのところ棄権が続いているから
慰めることはあったのだけど
きっと今回はいつもより
彼に寄り添えるのかもしれないし
もしかしたら
彼もそれを望んでいたのかもしれない
でも
それでよかった
溜め込んだ気持ちを出せる場所
その存在になれるだけでよかった
ただ
ゴールできなくても
楽しいを感じてほしい
それだけは伝えた
ボランティアをして
一番に感じた気持ちだったから
そうやな、ほんまありがとうな〜
逆に私からしたら
直向きな姿に元気をもらえた
だから
締めくくりの言葉は
「私も元気もらえたよ、ありがとう」
